書誌情報:岩波新書(1430),v+278頁,本体価格760円,2013年6月27日発行
- 作者:堤 未果
- 発売日: 2013/06/28
- メディア: 新書
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民主党と共和党という二大政党制のもとで,どちらの政党が政権を取るかに目を奪われることが多い。相対多数を名目に二大政党以外の少数党の存在とその支持者を切り捨てることは民主主義とはいえない。著者は民主党政権であれ共和党政権であれそれを数十年にわたって権力構造を変質させてきた大きな存在に注目する。それが企業化し株式会社化したアメリカの姿である。
飼料,種鶏,生産,屠畜・加工,流通まで総合事業体に化した養鶏業界,食品販売と加工を独占する巨大多国籍企業,GM種子で全世界を視野に入れた大規模アグリビジネス,教育と公共自治体に蔓延する民営化,企業献金とCM広告で潤う政治とマスコミ,これらアメリカで進む(株)は80年代以降の規制緩和・民営化の必然的な帰結である。
「スーパープレゼンテーション」(元ミシガン州知事ジェニファー・グランホルム,Eテレ,7月8日)には,非常事態宣言し,民営化された夢の町が「新たなアイデアとして,政治への競争原理の導入を提案」した功労者として登場した。(株)化するアメリカは,規制緩和と競争原理をまたぞろ叫ぶ国の明日であるにもかかわらずだ。安全神話と「安い」神話は疑ってかかるべし。
ラルフ・ネーダーに語らせた「異常なビジネス・モデル」(166ページ)はけっして嘘ではない。
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