1194飯島裕子著『ルポ 貧困女子』

書誌情報:岩波新書(1621),iv+227頁,本体価格820円,2016年9月21日発行

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貧困にすらなれない女性が多くいる。47人の女性へのインタビューから描き出した「貧困女子」の実態は予想以上だった。
家族というセーフティネットすら機能しなくなっている「関係性の貧困」,「家事手伝い」に隠れているニートや引きこもりの問題,風俗産業が貧困と孤独に直面する女性たちの「セーフティネット」になっている事実,民間だけでなく公務にも広がっている非正規雇用,アラフォーを襲う結婚・出産のプレッシャー,二極化する「女女格差」がインタビューから分析していた。
著者は,働きづらさ,行きづらさという社会の構造に迫り,国の政策として推進している少子化対策と「女性活躍」とのズレを指摘する。貧困にすらなれない女性たちを可視化した本書の意味は大きい。
「二か月休んだら二か月休む」(91ページ)は「二か月働いたら二か月休む」か。また,「(前略)貧困と不安定雇用がデフォルトの多くの女性たちの状況が何も変わらないのだとしたら,片手落ちもいいところだ」(183ページ)も慎重さが必要だろう。