書誌情報:集英社新書(0763A),206頁,本体価格720円,2014年11月10日発行
- 作者:堤 未果
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: 新書
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オバマケア(「医療保険制度改革法」)については期待が込められていた。民主党政権で実現し,日本の「国民皆保険」に近づく一里塚になるという期待である。オバマケアはロムニーがマサチューセッツ州知事時代に成立させた医療保険改革「ロムニーケア」が下敷きになっており,オバマケアの骨子を設計した人物は全米最大の保健会社ウェルポイント社の重役だった。
医療保険加入を義務化したものの,民間医療保険と薬価に手をつけず,薬の自己負担率を高め,高齢者医療費縮小などを内容とするオバマケア。国民の期待の影で暗躍し株価上昇でウハウハしている保険業界と製薬業界の構図が浮かび上がっている。フードスタンプ発行によって潤ったウォルマート,ファストフード,加工食品メーカー,ウォール街の投資銀行(カード手数料が入る)に続いて,「国民皆保険」の名の下で進行する「医産複合体」がつぎの主役というわけだ。
日本で進む規制緩和・市場開放の大合唱(混合診療解禁,株式会社病院,保健組織の民営化,診療報酬改革,公的保険への営利民間保険参入,投資信託など)は,「WHOが絶賛し,世界40か国が導入する日本の制度(国民皆保険制度:引用者注)」(201ページ)を標的にしている。
たしかに法案に最終的に署名したのは民主党の大統領オバマだった。著者が報告しているその法案のシナリオ・ライターと制度設計した推進役をみれば,オバマケアが「私たちの国日本が持つ数少ない宝ものの一つ」(201ページ)国民皆保険制度とはまったく異なることが了解できる。
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