327森岡孝二著『貧困化するホワイトカラー』

書誌情報:ちくま新書(781),253頁,本体価格760円,2009年5月10日発行

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日本の貧困は非正社員社員だけでなく,正社員にも及んでいる。著者の言葉を借りれば,マネープアだけでなくタイムプアの層まで視野に入れなければならないということだ。
日米比較にもとづきながらホワイトカラーの悲哀を具体的数字で裏付ける叙述は,「下流新書」にはない追力を持っている。絞り尽くされるホワイトカラー,過労と女性差別の告発は,たんに市場経済カニズムから生まれたものではなく,経済界の要求と新自由主義の政策イデオロギーを梃子に政府によって推進されてきた雇用と労働の規制緩和の産物であることを物語っている。
ホワイトカラーがいまやエグゼンプション状態であるなら,「ディーセント・ワーク」(ILO)の提唱も現実味を帯びてくる。著者は,まともな働き方(まともな雇用,まともな賃金,まともな労働時間)の実現を言う。
マネープアとタイムプアは貧困ということではまったく同じなのだ。(東京の某ホテルにて)