056ふらんす物語展および図録

松江に着いた5日に,「夕日の見える美術館」島根県立美術館に行った。宍道湖畔にあり,夕日に染まるロビーからの眺望も魅力のひとつだそうだが,この日は生憎の小雨模様で夕日は見られなかった。
企画展は震災復興支援特別企画・愛知県美術館コレクション展「ふらんす物語――ピカソマティスロダン…そしてフランスを愛した日本人画家たち――」だった。もともと「マルセイユ美術館展」を企画していた。「東日本大震災の余波」――原発事故のことだろう――で中止になり,その代替展示となったものだ。19世紀末から20世紀初めにかけての印象派,ポスト印象派フォーヴィスムキュビスムなどフランス近代美術とそれらの影響を受けた日本の美術家たちの作品である。「ふらんす物語」は永井荷風からの借用。「ああ!わがフランスよ!」と賞賛だけでなく,日本人美術家への作用・反作用をも見て取ることができた。平日のせいもあり,貸し切り状態といってもいいほどで,ゆっくり鑑賞できた。
島根県立美術館のコレクション展も足早に鑑賞した。絵画(コロー,コラン,クールベなどのフランス近代洋画と日本画),現代版画,工芸(出雲・布志名焼),フランス写真――パリ・コミューンで崩壊する前のパリ市庁舎ファサードを撮ったシャルル・マルヴィルの一葉に立ち止まった――と一部企画展に合わせたテーマになっていた。
162ページの図録(2,000円)は作品の解説だけでなく作者の簡単な紹介もある。

タイトル 執筆者など
ごあいさつ 長谷川三郎(島根県立美術館長)
ふらんす物語」によせて 村田眞宏(愛知県美術館長)
第1章 フランス20世紀美術と日本
第2章 明治の洋画 フランス・アカデミスムの受容
第3章 大正期 個性の表出
第4章 フォーヴィスムの日本的展開
第5章 エコール・ド・パリの日本人画家たち
第6章 1930年代から戦後へ 抽象表現の展開
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