530読売新聞教育取材班『大学の実力2011』

書誌情報:中央公論新社,253頁,本体価格1,400円,2010年9月25日発行

大学の実力〈2011〉

大学の実力〈2011〉

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読売新聞が教育力をキーワードに大学の実力調査をはじめたのは2008年のことだった。新聞紙上での特集連載のほか7月には一覧表を掲載している。特集といい一覧表といい大学特集のなかでは中身が濃い。読売の大学実力調査は大学情報としては屈指のものといっていい。2008年は「FD(組織的な教育力向上」,2009年は「学生支援」,2010年は「就職に強い大学とは?」である。
読売の一覧表の特徴はランキング表ではないこと。学生数,教員数,退学率,卒業率,入試方法別入学者数などの基礎的データと学部別就職希望者数,就職者数,卒業後の支援などからなっている。本書の約1/3はこの一覧である。
大部分は大学にかかわる文章編である。大学選びの視点,入試の種類と選び方,大学の学習支援策,就職支援策,就業力,職員力など「大学とはどんなところか」を受験生向けの解説にあてられている。
一覧表は2009年と2010年を掲載して経年変化を看取できるように工夫してある。評者のもっとも関心を寄せていた「入試方法別入学者」の2年分は貴重な調査である。これをすべて公表してこそ情報公開に値するとは何度も繰り返してきたとおりだ。
明治大学は2009年度は「総数」のみ公開から2010年度は「総数」,「一般(センター含む),「付属・系列」を公開した。「AO」,「指定校推薦」,「公募制推薦」は依然空欄のままだ。
早稲田大学は「総数」,「一般(センター含む)」,「付属・系列」の公開からすべての項目で公開するようになった。
立命館大学はすべての公開からすべての非公開に変わった。理由は不明だ。
慶應義塾大学はすべて非公開。明治,立命館慶應義塾と日本では名の通った私立大学がこの情報開示でいいわけがない。
昨年のハードカバーで2,000円から,ソフトカバーで1,400円と買いやすくなった。一覧表を眺めるだけでも買う価値がある。「受験生のみなさんには,オープンキャンパスなどで大学を訪れる際,ぜひこの本を持参して教職員に疑問点をぶつけてほしいと思います。「なぜこの項目を公表しないのか」「なぜ実施している学生支援項目が少ないのに,総合自己評価がAなのか」……。受験生向けのカラフルな大学案内からは決してうかがえない大学の本音が,こうした質問への答えに隠されているはずです」(252-3ページ)。