1239木村誠著『大学大倒産時代――都会で消える大学,地方で伸びる大学――』

書誌情報:朝日新書(627),222頁,本体価格760円,2017年8月30日発行

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18歳人口は14年後には約20万人減る。大学進学率が急増しなければ受験生が約10万人減る。入学定員1,000人規模の大学が100校消えることになる。大学サバイバル時代に突入したといっていい。
大学の定員増は文科省の認可事項であり毎年3月と6月に申請を受け付ける。2017(平成29)年3月には東京23区内12私立大学が2018(平成30)年度合計2,183人の定員増を申請した。文科省は東京23区内の定員増を押さえる方針を閣議決定し(6月),そのうえで大学設置認可に関する告示を改正し,すでに校舎の新設を決めているなどの例外を除き23区内の私立大学の定員増を認めないとしている。3月申請文の2018(平成30)年度については文科省と私立大学側との調整が不調に終わり,定員増は認められた。東京23区内の定員抑制策にたいしては,学問の自由や教育を受ける権利への制約を主張する日本私立大学連盟と地方の人口流出を抑える策として有効であるとする全国知事会との主張が対立している。東京23区内の定員抑制策(新学部をつくる場合は既存の学部を廃止するなど全体の定員が増えないようにすることを含む)の実現は早くても2019(平成31)年度からになる。東京23区内の大学定員抑制策は,COCやCOC+などの地方大学での専門人材育成支援や地元就職者(率)向上支援,大企業の本社機能の地方移転推進などとも関連している。
おそらく定員増を申請した大学のなかには大きい代償を払うことになる大学もでてくるであろう。それはともかく本書には,大学教育の現状や志願者囲い込み作戦,都会の「崖っぷち作戦」地方中規模大学の生き残り策,国立大学間の格差と地方国立大学の挑戦,女子大学の特性などタイトルで釣りながら頑張っている大学への応援歌が流れていた。大都市では競争に基づく市場原理を,地方では雇用創出策を中心とした選別強化をが著者の視点だ。志願者拡大路線が岐路に入っていることだけは間違いない。
地方活性化の中核を選んだ(選ばされた?)国立大学の運営費交付金再配分やCOC・COC+事業にも触れていた。