734木村誠著『危ない私立大学 残る私立大学』

書誌情報:朝日新書(349),214頁,本体価格760円,2012年5月30日発行

危ない私立大学 残る私立大学 (朝日新書)

危ない私立大学 残る私立大学 (朝日新書)

  • 作者:木村 誠
  • 発売日: 2012/05/11
  • メディア: 新書

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私立大学は10年で100校以上消える厳しい状況に直面しているとし,施設規模,教育力,就職力,募集力,財政情報(学生数,教員一人当たり学生数,同蔵書数,同校舎面積,就職率,志願者数,志願者増減率)をもとにサバイバル・ランキングにまとめ,東京ビック6,関西,ミッションスクール,地方の大学を名前を挙げて紹介している。これらはいずれも「残る」大学である。「危ない」大学の名前は当然ひとつも挙げていない。
著者が挙げる指標や特徴ある取組としている点は,就職率や資格取得率のように,最終章で高校教師の意見「生徒に勧められない大学」のかなりの特徴と重なっている。
「さまざまな指標からその大学の総合的実力を知る」(206ページ)必要があるとして,「大学評価の指標」(208-210ページ)を挙げている。科研費などの研究水準,FDの実施などの教育力,学生相談体制や奨学金の充実などの大学生活,キャリア教育などの就職率の項目は,「さまざまな情報を積極的にリサーチすることがますます重要」(207ページ)として読者に委ねるのではなく,著者のような「教育問題研究家」が率先垂範すべきことではないだろうか。
ある国家試験の合格者数がトップの大学を紹介して「早くから専門学校とのダブルスクールに通う学生が多い」(102ページ)のを肯定する。そういう大学がはたしていい大学なのか。地頭力があるにしても大学の教育力や実力とは別の話だ。