630寺田篤弘著『壊れる大学――ドキュメント・日本大学国際関係学部――』

書誌情報:人間の科学社,197頁,本体価格1,400円,2010年11月7日発行

壊れる大学―ドキュメント日本大学国際関係学部

壊れる大学―ドキュメント日本大学国際関係学部

  • 作者:寺田 篤弘
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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定年延長否認問題――65歳定年制度にもかかわらず70歳までの延長を否認されたこと――と剽窃疑惑を大きな論点とした大学告発本である。前者に関連しては別の教授の提訴で東京地裁で全面勝訴(被告=大学の「信義則」違反)となったとのことだが,その後どうなったのかについての記述がなく,著者を含め同様の件との繋がりが見えにくい。後者については大学にある公益通報者保護法を使った内部告発であり,資料も添えられている。
大学の制度やその運用は国公立問わず大学であるかぎり共通する部分と大きく違う部分との両方含んでいる。さらにかりに共通した部分があったとしても構成員の参加意識や意思決定システムによって違ってくることもある。
著者が告発する一学部長の「強権」(と「剽窃」疑惑のような資質)もさることながらそれを許してきた教員たちのヒラメぶり(本書では「奴隷化した教員」)も異常というしかない。
著者の孤軍奮闘ぶりは伝わってきたし,「一つの大学論」(166ページ)――学部長のポリティックスを許す組織と個人――としての意味はあろう。この種の本は読みたくもあり,読みたくもなし,という複雑な感触だ。
(「、」と「,」の混在がいくつかあった。著者・出版社としては「単純ミス」だ。)