634倉部史記著『文学部がなくなる日』

書誌情報:主婦の友新書(017),191頁,本体価格781円,2011年3月10日発行

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本書のタイトルは各論のひとつであり,経営破綻の危機にある大学,ユニバーサル化した大学の風景,生き残りをかけた大学,入試と大学のあり方を問い,大学選びの要点をまとめあげている。大学や大学生を揶揄する類書は多いが,大学プロデュースという新しい切り口が清々しい。
大学卒業時の学士が580種類以上あること,文学部を冠する学部名は少なくなっても人文科学系志望者は減っていないこと,リベラルアーツはますます重要になっていること,文学部はシニア層への本格展開の可能性を持っていること,入試問題と入学後の追跡調査をした上での作問への反映は少ないことなどを論じ,偏差値ランキングによる大学選びに替わって教育への取り組みと研究の中味が受験生に伝わる新しい高大連携を提唱している。
「大学の「核」は,キャンパスの綺麗さでも,世間的な聞こえの良さでもなく,「人」」(174ページ)という主張が新鮮に響く。「高校生の周囲にいるオトナ,すなわち教員や家族がしなければいけないことは,テストの点がとれるよう励ますよりも,まず,「自分が何をやりたいのか」を考えさせ,そのために試行錯誤させること」(181ページ),さらには「教育はもう,特定の組織だけが担うものではなく,社会全体のネットワークのなかで作っていくべきもの」(187ページ)などとする中朝は,大学プロデューサーを自認する著者らしい(「大学プロデューサーズ・ノート」→http://www.wasedajuku.com/wasemaga/unipro-note/)。
大学のミッションの明確化と入試方法(とくにAO入試),さらにはカリキュラムとの連動の重要性を指摘しているのは大学人に考えさせる課題のひとつだ。