051新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム

今年度から始まった「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」(学生支援GP)の選定結果が発表された(8月29日)。共同通信社が「新発想の学生支援70件選定 文科省が財政援助」(http://www.47news.jp/CN/200708/CN2007082901000727.html)と配信したものの,マスコミの反応はいたって鈍い。18歳人口のおおよそ半分が大学進学する時代に突入し,大学はこれまでにない学生支援の取組を必要としている。各大学等がどのような学生支援を必要としているかは,下に示す選定結果よりは申請状況を一覧したほうがいい。たとえば,茨城大学「要支援学生の早期把握・支援システムの構築」,お茶の水女子大学「早期離職を防ぐワクチン型キャリア支援」,横浜国立大学「横浜発,学生危機の発見と対応体制の構築」,京都大学「学業不振の背景の検討と支援」,県立広島大学「引きこもり学生への協働的支援モデルの構築」,佛教大学「「縁」コミュニティによる離脱者ゼロ計画」,九州保健福祉大学「今日的課題である学生の大学適応化戦略」などのように,大学として取り組むべき課題の一端が示されているように思う(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/gakusei/07070619.htm)。
学生支援GPの目的は,「学生の人間力を高め人間性豊かな社会人を育成するため,各大学・短期大学・高等専門学校における,入学から卒業までを通じた組織的かつ総合的な学生支援のプログラムのうち,学生の視点に立った独自の工夫や努力により特段の効果が期待される取組を含む優れたプログラムを選定し,広く社会に情報提供するとともに,財政支援を行うことで,各大学等における学生支援機能の充実を図るものです」(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/gakusei.htm)。
さて,学生支援GPは,文科省がまとめて予算要求し,選定等の実施は独立行政法人日本学生支援機構である。趣旨や申請状況までは文科省,選定以降は日本学生支援機構と分離されており,ホームページでの情報開示もきわめて分かりにくい。さらに,他のGPは,労を惜しまず(?)サブタイトルも公表しているのにたいし,学生支援GPではサブタイトルが省かれており,プログラムの内容も理解しにくい。
本ブログでは,すでに「グローバルCOE」を含めてこの話題について何度か扱ってきた。

以下に申請・選定状況(選定件数/申請件数)と選定プログラムを掲げる(愛媛大学のプログラムのみサブタイトルを追加している)。選定率は25.7%となっている。

区分 国立 公立 私立
大学 21/74 6/19 21/114 48/207
短大 0/0 0/1 11/28 11/29
高専 11/36 0/0 0/0 11/36
32/110 6/20 32/142 70/272
整理番号 プログラム名 大学等名 プログラム担当者名
大学 48件選定
1 夢を育むe-学生支援 北見工業大学 小林 道明
2 障害学生も共に学べる総合的学生支援 宮城教育大学 藤島 省太
3 視・聴覚障害学生の専門性を高める学習支援 筑波技術大学 石原 保志
4 チューター制度を活用した臨床実習支援 群馬大学 田村 遵一
5 双方向の多様な場づくりによる学生総合支援 千葉大学 宮野 モモ子
6 学芸カフェテリアによる学修・キャリア支援 東京学芸大学 久保田 慶一
7 新しい地球人養成プログラム 東京農工大学 福嶋 司
8 3相の〈ことつくり〉で社会へ架橋する 東京工業大学 三木 千壽
9 ダブルホーム制による,いきいき学生支援 新潟大学 河野 正司
10 「オフ」と「オン」の調和による学生支援 富山大学 斎藤 清二
11 心と体の育成による成長支援プログラ厶 金沢大学 吉川 弘明
12 個性の自立を≪補い≫≪高める≫学生支援 信州大学 小坂 共榮
13 生涯健康を目指した学生健康支援プログラム 岐阜大学 佐々木 嘉三
14 潜在的支援力を結集した支援メッシュの構築 名古屋大学 鈴木 國文
15 地域「里親」による医学生支援プログラム 滋賀医科大学 永田 啓
16 市民社会におけるリーダーシップ養成支援 大阪大学 大和谷 厚
17 チャレンジする女性のキャリア形成支援 奈良女子大学 井上 裕正
18 学生の自主的活動の評価と教育効果の向上 島根大学 坂本 一光
19 新時代の学生リーダー養成プログラム――愛媛大学リーダーズ・スクール (ELS) ―― 愛媛大学 秦 敬治
20 コラボ考房と2つの道場が育む自律型人材 高知大学 松永 健二
21 学生が自ら育む人間関係力醸成プログラム 長崎大学 管原 正志
22 薫風・満天フィールド交流塾が育む人間力 秋田県立大学 小林 由喜也
23 プロジェクト卒業生240+α 会津大学 太田 光一
24 WEB 学生サービスセンター構想 大阪府立大学 石井 実
25 実践的「地域医療マインド」育成プログラム 和歌山県立医科大学 仙波 恵美子
26 双方向的情報システムの構築による学生支援 島根県立大学 堀内 好浩
27 総合的人間関係力を涵養する学生支援 山口県立大学 田中 マキ子
28 健康の自己管理能力を養う食育支援 東北福祉大学 福冨 哲也
29 インクルージョン社会をめざした大学づくり 東北公益文科大学 伊藤 眞知子
30 卒業生と連携した地域協働型政策研究支援 慶應義塾大学 古谷 知之
31 学生みずから発信する「自分史」作成支援 國學院大学 遠藤 彰郎
32 出身地域へのアウトリーチによる自立支援 東京家政大学 岩井 絹江
33 TKU ベーシックプログラム 東京経済大学 堺 憲一
34 マイライフ・マイライブラリー 東京女子大学 小林 一章
35 人間知を育む相互交流プログラムの展開 東京薬科大学 土屋 明美
36 「学生の力」を活かした学生支援体制の構築 法政大学 安東 祐希
37 学生部による社会人基礎力形成支援の新展開 明治大学 柳澤 敏勝
38 異文化共生社会で生きる力を養う実践活動 早稲田大学 島田 陽一
39 校訓に基づく入学前?卒業後までの総合支援 関東学院大学 吉原 高志
40 自分発見型学生支援ネットの構築に向けて 名古屋学院大学 三井 哲
41 地域コミュニティによる学生支援方策 同志社大学 西村 卓
42 「縁」コミュニティによる離脱者ゼロ計画 佛教大学 田中 典彦
43 広がれ!学生自立型ピア・コミュニティ 関西大学 芝井 敬司
44 発達障害を有する学生に対する支援活動 プール学院大学 森定 玲子
45 健康で規則正しい生活が勉強する学生を創る 畿央大学 渡辺 幸重
46 技術系女子学生の継続的なキャリアデザイン 広島工業大学 宮崎 祐助
47 学生による若者と社会のための自主活動支援 立命館アジア太平洋大学 中野 雅博
48 学びあい・支えあいの地域教育の拠点の創生 沖縄大学 山門 健一
短大 11件選定
1 基礎学力習熟のための支援システムの構築 北海道自動車短期大学 加賀田 誠
2 AllForOneをめざす学生支援活動 聖徳大学短期大学部 野原 八千代
3 キャリアデザインをコアとする修学支援策 千葉経済大学短期大学部 飯名 晧作
4 学生の主体的活動を誘発する支援環境の構築 湘北短期大学 黒崎 真由美
5 地域をキャンパスとした人間力向上の取組 富山短期大学 武藤 憲夫
6 短期大学を拠点とした長期的自立支援の取組 山梨学院短期大学 田邉 幸洋
7 学生生活支援の有機的連携のための基盤整備 名古屋短期大学 茶谷 淳一
8 即戦力となる人材育成のための学生支援 京都外国語短期大学 石川 保茂
9 地域の中で世界を感じる 京都経済短期大学 西川 宝
10 人命尊重マインド養成支援プログラム 岡山短期大学 浦上 博文
11 進路支援対策一貫システムの構築 別府大学短期大学部 関谷 忠
高専 11件選定
1 地域資源と学寮を活用した人間力の育成 八戸工業高等専門学校 菅原 隆
2 学生の社会力を育成する野田山プロジェクト 宮城工業高等専門学校 飯田 清志
3 発達障害を持つ学生のための特別支援室 仙台電波工業高等専門学校 野田 泰久
4 マルチメディア活用型ピアサポートシステム 福島工業高等専門学校 根本 信行
5 長岡高専地球ラボによるキャンパスの国際化 長岡工業高等専門学校 涌田 和芳
6 学外連携活動による人間力向上教育システム 石川工業高等専門学校 松田 理
7 CATV 局と連携した想像設計力発現の支援 鈴鹿工業高等専門学校 桑原 裕史
8 OJT による学生の自主性を育む支援 松江工業高等専門学校 勝部 豊
9 高専生テクノショップ育成 呉工業高等専門学校 山岡 俊一
10 高等専門学校での特別支援教育推進事業 佐世保工業高等専門学校 松尾 秀樹
11 新たな地域連携型クラブ活動支援プログラム 鹿児島工業高等専門学校 三角 利之