091富塚良三著『再生産論研究』

書誌情報:中央大学出版部(中央大学学術図書64),x+306頁,本体価格:3,300円,2007年3月1日

再生産論研究 (中央大学学術図書)

再生産論研究 (中央大学学術図書)

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著者は,かつて『恐慌論研究』(未來社,1962年11月;増補版,1975年7月)および『蓄積論研究』(未來社,1965年4月)という本格的研究書で知られる。また,『講座 資本論の研究』全5巻(青木書店,1980-1982年)およびマルクス没後110年を記念した『資本論体系』全10巻11冊(有斐閣1984-2001年)の企画・編集に携わった。
本書は,前記『増補 恐慌論研究』の続編にあたり,その後急速に進捗した『資本論』草稿研究の成果をふまえた論争的書物である。『恐慌論研究』は過剰蓄積の累積構造を確定するにあたり,再生産表式の独自の解釈による「均衡蓄積軌道」の提起で大きな反響を呼んだ。本書の論争的主題の多くは,マルクス再生産(表式)論の成立にかかわっている*1。市場編成原理にかかわるマルクス的解釈の理論および論争の整理は,現代的課題解明と直結どころかかなり遠い。本書がいま意味があるのは,マルクスを対象とした経済学史的アプローチ(再生産論成立史)のひとつとして位置づけたときだ。

見出し
序文 -
第I部 恐慌・産業循環論の体系構成
- I 恐慌論体系の展開方法について――久留間教授への公開書簡(その一)――
- II 再生産論と恐慌論との関連について(一)――久留間教授への公開書簡(その二)――
- III 再生産論と恐慌論との関連について(二)――久留間教授の公開回答状(二)に対する再批判――
第II部 再生産論の課題
- I 再生産論の課題〔1〕――『資本論』第2部初稿第3章結節「再生産過程の攪乱」について――
- II 再生産論の課題〔2〕――『資本論』第2部初稿第3章「流通と再生産」――
- III 再生産論の課題〔3〕――『資本論』第2部第2稿第3章の再生産論について――
- IV 再生産論の課題〔4〕――再生産論と恐慌論の関連に関する諸説の検討――
- V 再生産論の課題〔5〕――総括と展望――

*1:本書で批判されている久留間説ついては,大谷禎之介『マルクスに拠ってマルクスを編む――久留間鮫造と『マルクス経済学レキシコン』――』大月書店,2003年9月,asin:4272111043,参照。