778不破哲三著『『資本論』はどのようにして形成されたか――マルクスによる経済学変革の道程をたどる――』

書誌情報:新日本出版社,348頁,本体価格2,000円,2012年1月10日発行

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著者による『資本論』形成史研究の3冊目である。1冊目はマルクスエンゲルスの協力関係に焦点を当てた『エンゲルスと『資本論』』上・下(新日本出版社,1997年,上:[isbn:9784406025027]・下:[isbn:9784406025034])であり,2冊目は再生産論と恐慌の問題に絞った『マルクスと『資本論』――再生産論と恐慌――』上・中・下(新日本出版社,2003年,上:[isbn:9784406029711]・中:[isbn:9784406029872]・下:[isbn:9784406029933])であった。3冊目の本書は――内容的には一部前2書と重なっている――,『資本論』を中心とするマルクスの経済学説の展開と革命論との関連を強く意識した形成史研究である。
「57-58年草稿」と「61-63年草稿」・「63-65年草稿」などから,一般的利潤率と絶対地代,発生論的方法,マルクス独自の「経済表」,恐慌と利潤率低下,信用論の展開,機械論の展開を読み取っている。さらに,「61-63年草稿」を経て第1部完成稿にいたるもっとも集中したマルクスの経済学研究とヨーロッパの労働運動への関わりとを再確認している。マルクスのテキストに集中して析出した理論的把握の特徴づけは,『資本論』形成史研究への引証を含まないゆえに,すべて著者による「新発見」となる。
理論研究の展開にとどまらず革命論をつねに意識した『資本論』形成史は,「職業的革命家」である著者ならではのものだ。