335不破哲三著『マルクスは生きている』

書誌情報:平凡社新書(461),227頁,本体価格:720円,2009年5月15日発行

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

  • -

マルクスを,マルクス自身の歴史のなかで読む」。哲学,経済学,未来社会の3点に絞って論じたマルクス論だ。代々木の出版社ではなく,文京区白山の出版社というのがいい。労働者の人間発達論への目配りとマンガでは表現されえない叙述の妙ということでは,この間出たマルクス本のなかでは出色である。
著者のマルクス論と所属する党の見地とはいつも重なるのが気になる。著者の見解が党のそれを代表し,いつの間にか「公認」されてきたように思われる。国家独占資本主義論,構造改革論,先進国革命論,複数政党制論,プロレタリア独裁論などとは違って,本書は著者の考え方を提示したもので,党の見解とは異なる(同じであってもいいが)ことが明記されていていい。
「現在の社会を特徴づける「資本主義社会」という言葉も,マルクスが名づけ親である」(89ページ)は微妙な表現だ。「資本主義」という言葉自体はマルクスのものではないことはすでにはっきりしているからだ。