書誌情報:集英社新書(0494B),218頁,本体価格700円,2009年5月20日発行
- 作者:三田 誠広
- 発売日: 2009/05/15
- メディア: 新書
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全共闘運動時代を経験した芥川賞受賞作家によるマルクス論だ。マルクスが提起した問題を受けとめて,新しいコミュニティー(農業共同体を含む)作りに生かそうというマルクス応援歌といえる。
昔の若者たちがなぜマルクス信奉に陥ったのかと冷静に,批判的に観察し,マルクスに関する謎解きがひとつの柱である。「銃撃や爆弾テロは,もはや正当な意思表示やデモンストレーションではない」(107ページ)と過激な運動に走った学生運動を回顧するのは著者の見識を表すものだ。
いまひとつの柱は,格差問題に代表される資本主義の問題性をマルクスからの継承点に据えていることである。
本書での叙述は論証というより体験的印象論の趣が強いにしても,マルクス主義と存在した社会主義諸国における党の独裁体制と官僚機構への批判的見地は一貫している。
それでもなお,マルクスが問題にした内容を積極的に受けとめようとする論旨は十分読み取ることができる。
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