書誌情報:イースト・プレス,190頁,本体価格552円,2008年12月15日発行

- 作者:マルクス
- 発売日: 2008/12/01
- メディア: 文庫
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『資本論』を漫画にしたということで読んでみた。「資本の生産過程」,「搾取」,「労働の売買」,「価値」のタイトルで,家内工業でチーズ製造を営む家の息子ロビンが主人公。投資家ダニエルのもとでチーズ工場を経営し,大金持ちを夢想するロビンの苦悩を描くことで,資本と搾取を考えさせる内容になっている。ロビンの工場で働くカールの過酷な労働をとおして,「俺たちは…奴隷じゃない」と言わさせて完。
最初のページで,「資本主義の支配のもと,社会はひとつの「巨大な商品の集まり」となる」と『資本論』冒頭の句を援用している。これは「富」が主語になっていることと違っている。ロビンの亡き母の遺言「中間の暮らし」が人間にふさわしいとは,ロビンソン・クルーソーからのものだろうか。漫画ストーリー作者の思い入れか。搾取の仕組みを説明する一番大事な部分である労働力と労働との区別が曖昧になっている。「労働の売買」なんていう表現を見たらマルクスは怒るぞ。
「原書との橋渡し」がこの漫画の目的なので,取り上げてくれたことで良としよう。
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