書誌情報:大月書店,208頁,本体価格2,200円,2009年10月20日発行
- 作者:ヨハン・モスト
- 発売日: 2009/10/01
- メディア: 単行本
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マルクスが生きていた時代のこと,ヨハン・モスト――当時のドイツ社会民主労働者党の活動家だったが,反戦デモを理由に囚われていた獄中で資本論の入門書を書いた――は,『資本論』第1巻からの抜粋に加筆してパンフレット『資本と労働――カール・マルクス著『資本論』のわかるダイジェスト――』を出版した。1874年のことだった。社会民主労働者党の指導者リープクネヒトの要請をうけて,マルクスはみずから改訂作業をして,「改訂第2版」を1876年に刊行する。ただ,マルクスが改訂作業をおこなったことについては記載されていなかった。その後多くの誤植以外には修正や加筆のないマルクス自用本が発見されるにいたって,100年後の1984年になってマルクスが「改訂第2版」を容認していたことが明確になる。マルクス=エンゲルス財団は1985年にマルクス自用本の写真複製リプリント版を,シュバルツ執筆のコメンタールを付して刊行することとなった。
本書の原型は1985年版の翻訳書である,ヨハン・モスト原著カール・マルクス改訂『資本論入門』(岩波書店,1986年10月,[isbn:9784000010320])とテクスト部分の『資本論入門 テキスト版』(同,1987年4月,[isbn:9784000010399])であり,本書は前者の新訳となる。
『資本論』入門書は数多くあるが,本書の最大の特徴は「カール・マルクス加筆・改訂」,つまり『資本論』の著者がみずから手をとった入門書というところにある。本書には黄緑色でマークした箇所とゴシック体となっている箇所がある。前者はマルクスが改訂作業のさいに書いた部分であり,後者はモストによる『資本論』第1巻からの抜粋である。これ以外の部分がモスト作成の部分となり,マルクスによる改訂作業の内容がわかるようになっている。さらには,新メガ第2部第8巻の付録に収録された『資本と労働』第2版および付属文書,訳者による注がある。
『資本論』の著者による『資本論』の入門書。これだけで一読する価値がある。
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