219嶋崇著『いまこそ『資本論』』

書誌情報:朝日新書(130),219頁,本体価格740円,2008年9月30日発行

いまこそ『資本論』 (朝日新書)

いまこそ『資本論』 (朝日新書)

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nohalfさんのメモで知った(http://d.hatena.ne.jp/nohalf/20080911/p1)。そうか今年はマルクス生誕190年にあたるんだった。これは帯のイラストで知った。1818年5月5日に生まれ,1883年3月14日に死んだことをあらためて確認した。
資本論』であれなんであれ,自分はこう読んだというのは読み手の自由だし,それを本にしよとしまいと,「『資本論』を初めてわかりやすい日本語で解説した」(10ページ)かどうかは別として,大いに歓迎したい。「大衆誌編集者の立場」(著者紹介より)というのは,マルクスの専門研究者ではないよ,ということ以外はなにも意味しないだろう。ということで,こんな本が出たよ,でおしまいでいいのだろうが,折角だからなかなか鋭いと思ったことだけを書く。
「具体的,特殊的,有用的」労働としては生産手段の価値移転を,「人間的労働力の支出」としては新価値を創造すると言っている個所(50ページ)は,古典派の議論と関連させて抽出しており(52ページ),非凡な着目だ。
第2巻の循環・回転・表式論をきちんとまとめている。不変資本の再生産の大事さを指摘しているのも適切だ。
第3巻については,利潤論,商業資本論,地代論と要の部分は読み込んでいる。
あれもない,これもないは指摘しなくてもいいだろう。著者が読んだ『資本論』を尊重したい。
解説(村串仁三郎)で「手ごろな入門書は,最新のものはあまりみあたらない」から,「少し古いもので手に入りやすいもの」(217ページ)として,古いもので1951年から新しいもので89年の9文献をあげている。評者は「最新のものはみあたらない」とは思わない。大部分古書店でしか入手できないものしかないほど『資本論』入門書ってなかったかな(三重否定の疑問符→肯定。悪文。)。