1202佐々木隆治著『カール・マルクス――「資本主義」と闘った社会思想家――』

書誌情報:ちくま新書(1182),263頁,本体価格860円,2016年4月10日

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「資本主義」を問い,見方を変え,闘った軌跡をマルクスの主要な著作に即して論じた入門書である。手法はオーソドックスに新しい歴史観唯物史観)を獲得するにいたる初期(1818年〜1848年),『資本論』に集約される経済学批判の体系化(1848年〜1867年),物質代謝論をはじめエコロジー,共同体,ジェンダーの視点を深化させた晩期(1867年〜1883年)にわけている。
著者の力点はあくまでもマルクスの終生変わらなかった資本主義の変革におかれている。変革構想を得てから,変革の契機の分析(=『資本論』)を経て,物質代謝を合理的・人間的に制御する未来社会(=アソシエーション論)を展望するマルクスを骨太に描いている。新メガ編集から見えてきた膨大なマルクスの抜粋ノートの概要を知る著者にして書き得た内容が含まれている。「晩期マルクスの変革構想は,物質代謝の固有性と多様性にもとづいて,あらゆる領域で物象の力に抗していくことであり,それをつうじて労働者たちのアソシエーションの可能性を拡大していくということであった」(253ページ)。