1203祝田秀全著『銀の世界史』

書誌情報:ちくま新書(1206),247頁,本体価格820円,2016年9月10日

銀の世界史 (ちくま新書)

銀の世界史 (ちくま新書)

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コロンブスの時代から近代日本まで,銀を中心にした世界市場の連鎖があったことを詳述している。イギリスの産業革命による資本主義の成立が奴隷制度とプランテーション経営が深く結びついていた。入植者に先住民の管理を委託したポトシ銀山でのエンコミエンダ制,スペイン領に毎年一定数の奴隷を送り出す利権であるアシエントは大西洋貿易圏の要をなし,世界の工場を基礎づけた。日本の近代化も上海とリンクする炭坑の経営と石炭輸出で成り立っていた。
奴隷制がなければ近代資本主義がありえなかったことを世界システム論から論じ,イギリス覇権の成立が黒人奴隷貿易,インド徴税権と綿製品市場の獲得,中国(清)とのアヘン貿易,奴隷制プランテーション西インド諸島と北米南東部)とインドの植民地化・市場支配とを不可欠としていた。
銀の時代は19世紀後半に金本位制に移行によって終焉をむかえる。日本におけるその移行は日清生後の清への賠償金をポンド建てによる軍事拡張路線と殖産興業による。
日本史は世界史と,世界史は日本史と結びついていることを教えてくれる好著である。