903ノルベルト・フライ著(下村由一訳)『1968年――反乱のグローバリズム――』

書誌情報:みすず書房,xx+283頁,本体価格3,600円,2012年4月20日発行

1968年―― 反乱のグローバリズム

1968年―― 反乱のグローバリズム

  • -

1968年は学生運動だったのか,青年の反乱だったのか,世代の反逆だったのか,社会的抗議だったのか,ライフスタイルの改革だったのか,文化革命だったのか。
著者の1968への視点は予想以上にシニカルである。「依然として歴史であるというよりも現代である」(212ページ)というのは当時の課題が残ったままであり,「全世界にわたる「同時性の仮想」のなかでの解釈と想像の成果」(214ページ)であるのは68年に歴史の必然性を託す後知恵という。
1968年の諸国での様相は,その年に限られたフランスを例外としてほぼ10年前後の前史と後史をもっているとして,フランス,アメリカ,西ドイツ,日本,イタリア,オランダ,イギリス,チェコスロバキアポーランド東ドイツを追う。似ていてそれぞれ異なる1968年が描かれている。たとえば,「日本で60年代に成立した抗議運動は,西の世界の特徴をかなり多く備えながら,しかしとりわけ暴力との関係において独自の展開を見せた」(154ページ)のようにだ。
大学事情とベトナム戦争が68年の共通する主題だったとはいえ,あらためて68年の複雑さと深さを物語っていた。