129渡辺眸著『東大全共闘1968-1969』

書誌情報:新潮社,182頁,本体価格2,300円,2007年10月20日

東大全共闘1968‐1969

東大全共闘1968‐1969

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東大闘争については'68・'69を記録する会編『東大闘争資料集』全23巻(1992年)――国立国会図書館と法政大学大原社会問題研究所に所蔵――として67年の医学部第一次研修協約闘争から68年の第二次研修協約闘争,69年の2月までのビラ,討論資料,学生大会議案,パンフレット,当局文書,メモ類が記録保存されている。本書収録の「闘争を記憶し記録するということ」の山本義隆によれば,映像資料の収録は完了し,資料集のデジタル化が進行中とのことだ。
東大闘争とはなんだったのか。「帝大解体を言うことによって,社会的に構造化された権力機構に自分たちのいる場で抗ってゆくという形の運動」(本書収録山本稿の今井澄追悼会での言葉)だったという。評者は,「バリケードの作り出した解放空間」やバリケードが同時に限界をも持っていたのではないかと思っているが,「権力にたいする人間の闘いとは忘却にたいする記憶の闘いにほかならない」(ミラン・クンデラ『笑いと忘却の書』,山本稿より孫引)との言葉を資料集という形でアーカイブ構築した努力に敬意を表したい。
この写真集もそうしたアーカイブのひとつとして評価すべきであろう。それにつけても,写真集のいくつかの個所にある著者の文中,「開放空間」(ボールド体:評者)という表現はないだろう(43ページ)。