書誌情報:恒和出版,538+31頁,本体価格6,800円,1976年10月25日発行
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文化5(1808)年の復刻版(「江戸科学古典叢書 絵でみる江戸時代の産業技術」第2巻)である。図書館で廃棄処分になっていたものをいただいてきた*1。『鯨史稿』(「げいしこう」と読む)は鯨本として有名で,大正14(1925)年に挿絵を省き『仙台叢書』第9巻として,昭和26(1951)年には謄写版として復刻されたことがあるという。本書は国会図書館蔵本を底本にした復刻である。
底本は6巻からなっている。巻之一「釈名第一」は鯨の名称を,巻之二「釈種第二」は鯨の種類を,巻之三「釈体第三」は鯨の各部分を,巻之四「附録第四」は世界および日本の捕鯨地,捕鯨用具を,巻之五「附録第五」は漁船,漁具,漁場職掌を,巻之六「附録第六」は捕鯨から鯨の解体を,それぞれ扱っている。本復刻版は1冊に編んだものだ。
九州大学デジタル・アーカイブ*2(ちなみにこのアーカイブは一見の価値がある。下記参照)のなかの「鯨絵・捕鯨史料」(下記参照)に国文学研究資料館「祭魚洞文庫」蔵を底本とした『鯨史稿』がある。これを見ると挿絵には色がついており,本『鯨史稿』のモノクロと異なっている。おそらく印刷上の制約があったと思われる。『鯨史稿』がどれほど現存し,どこに所蔵されているかなどについては評者にはわからないが,一見したところ国会図書館蔵本と国文学研究資料館「祭魚洞文庫」蔵本とはほぼ同じ体裁のようだ。著者大槻清準は仙台藩学校養賢堂学頭で,大槻玄沢の一族という。
200年前の捕鯨百科全書(の復刻)をたまたま手にし,それを手がかりにすばらしいアーカイブの存在を知ることになった。
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