319庭野吉弘著『日本英学史叙説――英語の受容から教育へ――』

書誌情報:研究社,iv+512頁,本体価格5,600円,2008年5月25日発行

日本英学史叙説 英語の受容から教育へ

日本英学史叙説 英語の受容から教育へ

  • -

2008年は,イギリス軍艦フェートンが長崎に来て薪水や食料をもとめ(ついでに狼藉を働いた)てから200年だった。長崎奉行松平図書頭は責任をとって始末書を残し自刃した。幕府はオランダ通詞6名に対し英語を修得するよう命じ,日本の組織的英語研究の始まりともなった。
本書は,この事件も含め,幕末の日本開国を促したアメリカの対日交渉と捕鯨業の盛衰,ペリー艦隊の一員だったプレブル大尉の見聞記を分析した第1部,代表的な明治人内村鑑三嘉納治五郎の英学修養と英語学習論や英語教育論を跡づけた第2部,さらには,英語教授法や訳読法について詳述した第3部,著者のかつての勤務先(と同時に発行元)だった研究社の『英語教育』発刊までの系譜を物語風に記述した第4部と,浩瀚な英学史である。
「研究社五大雑誌」のうち,『英語研究』『高校英語研究』『現代英語教育』,さらには『時事英語研究』,今年になって『英語青年』も休刊(廃刊?)となった。2007年に創立100周年をむかえた老舗出版社の英学史と「時代相」(第4部第3章のタイトルの一部から)とのかかわりも本書の柱になっている。