194『マルクス・エンゲルス・マルクス主義』第50号

マルクスエンゲルス研究者の会編『マルクスエンゲルスマルクス主義』第50号(八朔社,本体価格3,000円,2009年1月25日)が出た。2007年12月30日に亡くなられた服部文男教授追悼号の第1号である。追悼号の第2号は『マルクスエンゲルスマルクス主義』第51号として今月中に刊行予定。

【編集後記】
本号は,2007年12月30日に逝去された服部文男東北大学名誉教授への二号に亘る追悼号のうち,マルクスエンゲルス以降のマルクス主義に関連する諸論考 ・ エッセー等を収録した号である。 執筆者はいずれも,故服部教授の深い学問的業績あるいは豊かな人間性を評価して寄稿して下さった方々である。
富塚稿は, 1947年東大・大河内ゼミでの出会い以来60年余に亘る服部文男氏との人間的・学問的な親交を,節目節目でのやりとりを具体的に紹介されつつ,しみじみと描いた追想をもって巻頭を飾られたものである。萬谷稿は,植民地と「経済領域」の歴史理論的関係を深く追究されたものである。村岡稿は,帝国主義とグローバリゼーションをマルクス「後半体系」と接続させようとする理論的論考である。佐々木 建稿は,全般的資源危機問題をグローバル資本主義は解決できるか?を問う実践的 ・理論的論考である。倉田稿は,『金融資本論』の読み方と大塚金之助の伝記資料 ・講義資料を提示されたものである。 佐々木隆生稿は,氏の講義ノートに対する服部氏の評価がマルクスを超える経済学への氏の挑戦を励ましたことの思い出である。相田稿は,ゲゼルとアナーキズムの緊張をはらんだ関係を文献資料に即して詳細に分析したものである。 太田稿は,ナショナリズムの中核原理=「民族性原理」が含む解放的・抑圧的二つの傾向を,レンナー―ゲルナーを軸にして思想史的に深く分析したものである。橋本稿は,「階級闘争史観」を初めて打ち出した復古王政期のフランスの歴史家たちの見解を,プレハーノフに依りつつ紹介したものである。黒滝稿は,服部氏の帝国主義論研究の軌跡を辿ったものであるが,なお未完である。 大村稿は,服部論文「共産主義政党の規約『前文』の成立過程 」(1995)の知られざる作成経緯と要点を紹介したものである。
本号は,最初に発行される追悼号として,本来は2008年中の発行を予定していたのであるが,中々思い通りには進まず年を越してしまった。 この点では編集者として,故服部教授にお許しを請うほかないが,内容的には執筆者各位のお蔭で充実した追悼号になったことを,心から感謝申し上げる次第である。(黒滝正昭

タイトル 執筆者
追想 富塚良三
独占の「植民政策」論から「経済領域」の独占論へ 萬谷 迪
現代のグローバリゼーションと帝国主義 村岡俊三
グローバル資本主義と「資源問題」の論理 佐々木建
ヒルファディング『金融資本論』,そして大塚金之助 倉田 稔
服部文男先生と私の講義ノート 佐々木隆
ゲゼルとアナーキズム思想――経済改革論と「国家の漸進的解体」論との関連を中心に―― 相田愼一
民族性原理と民族的自治――属地的自治と属人的自治―― 太田仁樹
階級闘争史観の起源――フランス復古王政期の歴史家についてのプレハーノフの所説―― 橋本直
服部文男氏の帝国主義論研究(上) 黒滝正昭
服部文男「共産主義政党の規約『前文』の成立過程」について(『マルクス・エンゲルスマルクス主義研究』第26号,1995年12月,56-61ページ) 大村 泉