011野村一夫『インフォアーツ論――ネットワーク的知性とはなにか?――』

書誌情報:洋泉社新書079,192頁,本体価格720円,2003年1月22日

インフォアーツ論―ネットワーク的知性とはなにか? (新書y)

インフォアーツ論―ネットワーク的知性とはなにか? (新書y)

初出:コンピュータ利用教育協議会『コンピュータ&エデュケーション』第14号,柏書房,2003年5月30日

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タイトルの「インフォアーツ」とは著者の造語である。「情報技術(いわゆるIT)およびそれに基づく情報工学的文化」を「インフォテック」と呼び,それに「対抗するものとして構想された,ネットワーク時代に対応した知恵とわざの総称」だ。
なじみのない言葉であるだけに一見すると新奇な内容を予想させるが,インターネットと市民主義・ガバナンス原理,情報処理教育の情報環境にたいする人びとのコミュニケーション能力育成への転換,ネットワーク的知性のあり方の提言などきわめて説得的な内容をもっている。
著者によれば,「インフォアーツ」は,メディア・リテラシー,情報調査能力,コミュニケーション能力,シティズンシップおよび情報システム駆使能力を意味する。情報主体としての個人の発達は,集団としての発達が不可欠とし,この場を「苗床集団」と呼ぶ。「正統的周辺参加を内包した実践的状況を用意できる集団」だ。随所に社会学的知見をちりばめ,ネット社会の過去と現在から未来を透視した著作といえよう。本号の「巻頭インタビュー」ともども参看をお願いしたい。
(2007年3月9日追記)同じ著者による,批判科学としての社会学を語るように論じた社会学の入門書『子犬に語る社会学』(洋泉社,171+ii頁,本体価格1,600円,2005年1月21日)も気楽に読むことができる。また,このブログの「リンク集」にある「社会学個人サイト Socius」は野村さんのものだ。

子犬に語る社会学

子犬に語る社会学