316鈴木英生著『新左翼とロスジェネ』

書誌情報:集英社新書(0488C),214頁,本体価格700円,2009年4月22日発行

新左翼とロスジェネ (集英社新書)

新左翼とロスジェネ (集英社新書)

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ロスジェネや若者の「自分探し」の源流を新左翼にもとめ,新左翼を共同性や連帯希求の先駆者とする。「頂点」を極め,「自己否定」し,「極北」=「内ゲバ」にいたり,「少数者の運動」を経て,「消滅」した新左翼が,なぜ今「ある意味では,新左翼復権?」なのか。新左翼が影響力を持っていた時代は新左翼=「自分探し」だったが,新左翼が「消滅」してからは「自分探し」が前面に出てきたというのはそうだろうか。新左翼のみが時代を代表し,圧倒的力を持っていたことはない。「新左翼は,オウムや「右傾化」より建設的なサブカルチャー」(29ページ)だったろうか。
著者の新左翼へのシンパシーは本書のいたるところに感じられた。ひいきの引き倒しになっていないことを願うばかりだ。いったん新左翼そのものを客観化し,さらには徹底して「自己否定」することが必要だ。「新左翼の精神史」(183・199ページ)は別の様相を呈したかもしれない。
新左翼の周辺を描いた作品なら倉橋由美子は欠かせないだろう。体言止めの多用は新聞記者である著者の面目躍如たるものがある。