書誌情報:毎日新聞社,205頁,2009年6月30日
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毎日新聞朝刊文化面(東京本社版)のシリーズ「40年前――<政治の季節>を再考する」(2007年4月〜2009年3月)の単行本。一回ごとのテーマに沿って複数の寄稿者とインタビューからなる。テーマは,「ベトナム戦争」「革新自治体」「「マイカー」時代」「テレビ時代と深夜ラジオ」「ASEAN発足」「公害」「ミニスカートブーム」「アングラ演劇」「非核三原則」「三里塚闘争」「転換期の映画」「キング牧師暗殺」「大学紛争」「明治百年」「少年マンガの時代」「文化大革命」「三島由紀夫「楯の会」結成」「フォークソングの時代」「東大安田講堂攻防戦」「ベ平連」。巻末に,橋爪大三郎,坪内祐三,平沢剛の特別座談会がある。
テーマ毎で完結しているので,68年出来事事典のようで読みやすい。山崎正和がインタビューで,69年の東京大学入試中止について,「あれは私たち学者グループ(引用者注:山崎,若泉敬,高坂正堯,衛藤瀋吉ら)で発案し,楠田さん(引用者注:佐藤首相の主席秘書官)を通して佐藤首相に上申したアイデア」(85ページ)と初めて(すくなくとも評者には)告白している。
「大学闘争の中では「造反有理」がスローガンにな」るとの松本健一のインタビューでの発言(139ページ)は,「大学闘争」の特徴づけとしては正確ではない。高石ともやのフォークとニューミュージックの違いを「叙事詩と叙情詩の違い」(155ページ)は合点がいく。
脱走米兵援助にもかかわった「ベ平連」の活動を,「ごく普通の生活を営む人びとが,家族の協力することなしに,けっして成功しない」と評価し,「「家族」という各人の本来の居場所のほうにいったん向きなおり,これの合意形成をみないことには,状況が一歩も動かない」とまとめた黒川創の指摘は重い(168,169ページ)。
「「全共闘」や「六八年」といった言葉で理解した気になることを丁寧に回避しながら,多様な形態としてあった複数の六八年を,六八年的なもの,学生運動にとどまらない諸運動を,丁寧に見て行く必要がある」と発言しているのが,特別座談会3人のなかではもっとも若い平沢(75年生まれ)である。ポスト68世代であるがゆえに冷めた視線を持つことができたのだろう。
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