902北出俊昭著『協同組合と社会改革――先人の思想と実践から――』

書誌情報:筑波書房,102頁,本体価格1,200円,2012年12月10日発行

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グローバル企業の動向が世界をすべて規定しているかごとく報じられる一方,国連が「2012年を「国際協同組合年」とする国連総会宣言」を決定し(国連第64回総会,2009年12月),協同組合に「先住民族および農村地域の社会的経済状況の改善」や「持続可能な開発,貧困の根絶,都市と農村における様々な経済部門の生計への貢献」を期待したことについて触れることは稀である。
オーウェンロッチデールバスク地方モンドラゴン協同組合とカトリック教徒のアリスメンディアリエタの思想と実践を振り返り,現代の協同組合の国内課題(新自由主義との対抗と幅広い国民からの支持)と国外課題(多様化する国・地域間協同組合の協同)を整理している。公的セクターや資本家的セクターとも異なる協同組合セクターの役割と近年注目されつつある社会的企業との類似性にも目を配っている。
一般論ではあるが協同組合組織においても存在する非正規労働問題や不法行為に言及しつつ,私企業との区別と関連,社会改革との連携に可能性を見いだしていた。
小さい書物ながら扱っている主題の重要さを気づかせてくれた。