今日から,科研費B「マルクス抜粋ノートの編集とその活用による『資本論』形成史研究の新段階の開拓(研究代表者・平子友長,一橋大学大学院社会学研究科教授)の国際会議(一橋大学佐野書院)に参加している。初日の今日は「マルクス抜粋ノートの編集とその活用による『資本論』形成史研究の新段階の開拓」MEGA II/11巻に関する研究会があった。
リュドミーラ・ヴァーシナ (Ljudmila Vasina) (ロシア国立政治・社会史アルヒーフ研究員)による「『資本論』諸草稿の執筆時期の推定にさいしてマルクス抜粋ノートの研究が果たす役割について」 (Über die Rolle der Marxschen Exzerpte-hefte für die Ermittlung der Datierung der Manuskripte des Kapitals: auf dem Beispiel von Manuskript II aus den Jahren 1868-1870) は,近日中に刊行されるMEGA II/11編集の経験を詳細に報告したもの。マルクスの抜粋ノートから『資本論』第2巻の第2稿に取り入れられたものを例に,これまで未確定であった上記第2稿の執筆時期の推定にいたる過程を明らかにしていた。
大谷禎之介(法政大学名誉教授)は,「『資本論』第2部形成史における第8稿の意義について」として,MEGA II/11の付属資料に収められる「成立と来歴」 (Entstehung und Überlieferung) のドイツ語版を日本語にしたものを紹介した。第8稿の執筆時期,第2稿との対比,貨幣ベール観にとらわれた古典派経済学からの最終的克服とまとめ,日本における『資本論』草稿研究を反映させた見事な総括を披瀝した。
ちなみに,『資本論』第2巻については,マルクスによる8種の草稿があり,それをエンゲルスがまとめたものが現行版『資本論』第2巻である。
明日は,「マルクス抜粋ノートの編集とその活用による『資本論』形成史研究の新段階の開拓」MEGA IV/18に関する研究会がある。
早めに終わることを期待して,「大学出版会と大学図書館の連携シンポジウム」(https://akamac.hatenablog.com/entry/20080226/1204015494)への参加を考えていたのだが,午後の報告があるため,良くてちょっと顔を出すだけに終わりそうだ。
なお,今回ロシアから参加してくれたヴァーシナの講演も予定されている(文書では案内が回っている。残念ながら,一橋大学のウェブには告知されていない)。
- 一橋大学国際交流セミナー
- 日時:3月13日(木) 午後3時〜午後6時
- 場所:一橋大学佐野書院第2室
- 演題:ドイツ語版マルクス・エンゲルス全集第4部門 (MEGA IV) の編集について
- 使用言語:ドイツ語