363咲木英和著『誰もが読める「資本論」――起て 飢えたる者よ!――』

書誌情報:新生出版,341頁,本体価格1,429円,2009年6月20日発行

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折からのマルクス,『資本論』ブームによって浮かび上がってきたことがある。著者(元中学校教員)のように『資本論』に挑戦してきた多くの読者の存在である。しかも,大学教員を代表とする専門家の去勢されたかのような沈黙に比べて,はるかに元気がいい。この国の市民的力の潜在力に驚嘆するばかりである。
類書と区別できることは,日本の現実と歴史にこだわりをもって『資本論』を読もうとする姿勢だ。その分『資本論』で詳細に描かれたイギリス労働者の闘いは後景に退かざるをえない。ひとつの読み方として許容されよう。『資本論』との格闘にこそ意味がある。