357池上彰著『高校生からわかる「資本論」――池上彰の講義の時間――』

書誌情報:ホーム社発行・集英社発売,287頁,本体価格1,300円,2009年6月30日発行

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「学生時代には,よくわかんなかった。ひとつひとつ考えているうちに挫折しちゃったんだけど,こうやって「これなんのこっちゃ,わかりにくい文章だな」と,一生懸命自分なりに理解しようとすることによって,「読解力がついてきたな」って思うし,それと同時に,学生時代にわからなかったのは,社会を経験していなかったからなんだということに気づきます」(182ページ)。
高校生を前にした『資本論』講師は大学時代に読解に挫折したそうだ。社会科学の面白さと難しさは,原著者とともに追思惟することにあるだろう。そうしていったん相対化して現代に応用できるかどうかを切り分ける。「そこ(『資本論』:引用者注)から学びつつも,さらに現代の経済を,現代の経済学で分析し,処方箋を書いていかなければならない(色かけは引用者)」(「おわりに」286ページ)のとはちょっと違う。140年前の著作であろうとなかろうと当たっていることがあるから今でも読まれ,高校生向け『資本論』講座が成り立つのだろう。
資本論』の「読みこな」し,おめでとう!