666阿部真也・宮�哲也著『ポケット図解 マルクスの経済学がよくわかる本』

書誌情報:秀和システム,163頁,本体価格800円,2009年12月23日発行

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マルクスや『資本論』についての入門書・解説書はできるだけ探してきたつもりだった。本書は2年前に出ていたのだった。
このシリーズは1項目に見開きの2ページを使って左に解説,右に図解で,本書もそれにしたがっている。『資本論』誕生,『資本論』の基礎知識,資本主義の基礎知識,『資本論』と恐慌,1929年大恐慌,金融恐慌とマルクスや『資本論』の解説を踏まえて現代的経済現象の理解に繋げようという問題意識で編集されている。過剰生産恐慌という古典的恐慌からグローバルに展開する国際的貸付資本の過剰という現代的恐慌(1929年と2008年の恐慌)として資本主義を理解しようという意図だ。
商業信用と銀行信用の違い,貸付貨幣資本など阿部の得意とする商業資本論やインフレーション論をもとに金融危機世界恐慌のメカニズムを説明し,「市場・管理・ネットワーク」パラダイムを展望する点でユニークなマルクス本である。NPONGOのようなネットワーク組織の急速な広がりと市民や企業の連帯行動に,「自壊する」資本主義に代わるオルタナティブを見ようとしている。
「商業資本の必要性」を図示している箇所(67ページ)の「社会的総資本の運動」の図には,「・・・P・・・」がなく,「Pm(生産手段)」と「A(労働力)」を囲って「生産過程」としている。「・・・・・・W' - G'」を「流通過程」(「W‘ - G'」となっている)としているのもおかしい。これではマルクスの経済学が「よくわかる」どころか混乱するにちがいない。