102上海天長節爆弾事件と尹奉吉

1932年4月29日の上海天長節爆弾事件から80年を迎える。この事件の現行犯として逮捕され,のち金沢で処刑されたのが尹奉吉(ユ・ボンギル,Yoon Bong-gil)である。

今日,愛媛大学東北アジアの平和研究会の主催で,金熒雨「ユボンギルと白川義則を通して東北アジアの平和を考える」の研究会があった。金は,尹の地元・韓国礼山に在住する郷土史家である。白川はこの事件で殺されたうちのひとりで当時上海派遣軍司令官陸軍大将だった。松山生まれの軍人であり,陸軍大学校在籍時秋山好古宅に間借りしていたことでも知られている。
研究会では主として日本統治下の朝鮮で排日と独立に目覚めていく「義士」尹の短い生涯を追ったもので,白川については爆弾事件の当事者としてしか登場しなかった。
この研究会までには2回の学生海外研修(韓国平和友好の旅)での礼山訪問と当地での交流をもとに実現したもので,学生の訪問報告会を兼ねていた。
このエントリーで何度か触れた布施辰治の訪朝時期と尹の思想覚醒時期とが重なっており,ふたりのなんらかの繋がりを感じていた。尹が布施の訪朝時後援し特集で報道した東亜日報を愛読していたことまでしか分からなかった。評者にはまだ尹の思想形成のバックボーンや特徴を理解できていない。未読の下記を読んでみるつもりだ。山口隆著『尹奉吉――暗装の地・金沢から――』(社会評論社,1994年8月15日発行,[isbn:9784784503469]),同『4月29日(エンペラーズ・バースデー)の尹奉吉――上海抗日戦争と韓国独立運動――』(社会評論社,1998年7月,[isbn:9784784503759]),金学俊著・李琇恒編・河田宏監修・朴淳仁訳『評伝 尹奉吉――その思想と足跡――』(彩流社,2010年1月,[isbn:9784779115028])。
画像は今日の朝日新聞地方版より(縮小してある)。