書誌情報:角川ONEテーマ21(A-146),202頁,本体価格724円,2011年11月10日発行
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危機的な状況にある大学を論じようという「危機の大学」論で,昨今の大学論が危機に瀕しているという危機の「大学論」ではない。日本の大学の現状と問題,大学改革への視点と展望を論じている。序章と終章のみ尾木と諸星の短文を配し,本論を対談で構成した危機の「大学論」と評されなくはない速成新書にみえる。
書き下ろしと対談部分の内容は多岐にわたっているが,大学過剰論が著者たちの前提にあるようだ。そのうえで高校四年制論と生涯教育論が柱になっている。大学と教師に必要な「教育力」について,FDは「教員の能力向上のためのセミナー」であり「一種の自己満足」はないだろう。「旧態依然として改革が進まない大学もまだいっぱいある」との指摘はそのとおりだ。
北関東の国立大学ではトイレの前に行列ができるほど「便所飯」現象が日本の大学に蔓延しているという。大学で生じている問題は初等・中等教育の「破綻のツケ」,「全部大学に回されてしまった結果」となれば,「危機の大学」を論じても意味はない。
入試センター試験の資格試験への模様替え,秋入学の是非,3年卒業とセメスター制,単位制授業料,ボランティア活動の単位化など大学や大学人が考えなければならない論点も含んでいる。
日本の大学を論じる時の難しさは780もの数があるということ(2011年度現在)。大学こうあるべしという規範が成立しにくくなっていることではないかと思う。と同時に諸星が何度か引き合いに出している勤務大学のような「すばらしい」実践例を共有することでしか大学の未来はないとも思うのだ。
- 関連エントリー
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