611卓球ラバー考(その2)

「<日本卓球の至宝,覚悟の告発> 水谷隼 「世界の卓球界を覆う違法行為を僕は決して許さない」」(Number No.817→http://number.bunshun.jp/articles/-/293736)を読んだ。「世界の卓球界を覆う違法行為を僕は決して許さない」の決意は重い。
「補助剤」(「ブースター」)はラバーに塗ることで,スピード,威力,スピン,コントロールが増すと言われ,日本選手とドイツのボル以外の選手はみな使用していると噂されている代物である。国際卓球連盟(ITTF)は使用禁止しているにもかかわらず検査での検出が難しいとの理由で使用が野放しになっている,という水谷の告発は(その1)で触れたようにまったくの正論である。打球時の金属音の響きは異様である。
すでに日本卓球協会(JTTA)は接着シートの使用を ITTF に提案しているが,採用にいたっていない。ほかにも薄いアルミを貼る,接着剤を公認性にするなどの案もある。ITTF の会長アダム・シャララ会長が「不正行為をしている選手がいるのはわかっている」とロンドンオリンピック開催中のインタビューで答え,「リオまでには解決したい」と語った。水谷の「この1年以内にすべての状況をフェアにしていきたい」の覚悟を応援したい。
「自然な才能や天賦の才」(サンデル→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120903/1346683143)および公認の道具を使用することによってスポーツはスポーツとして成立する。「健康の維持や回復に必要とされる以上に,人間の形態や機能を改善することを目指した介入」は「エンハンスメント」(同上)と呼ばれ,遺伝子操作とともに倫理的問題を提起している。これに劣らず卓球ラケットラバーの補助剤使用問題は「使用する用具の差ではなく,アスリートが心技体のすべてをぶつけて勝敗を競うというスポーツの本質」(記事から)にかかわる重大問題である。