書誌情報:太田出版,229頁,本体価格1,200円,2011年10月5日発行
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多くの就活本はいい会社や希望する会社から内定をえるにはどうすればいいのかを扱っている。この種の就活マニュアル本はまさに「霊的な救いを提供する癒し宗教に似ている」(225ページ)といっていい。自己啓発本も同じで,評者も学生には絶対勧めない。
「ひとかどの人物」論や充実した大学生活論,「帰還場所=出撃基地(ホームベース)」論と言語化した著者の主張は評者の実感によく合う。「まともな教育とサークル活動がない大学では,学生の専門性と社会的スキルが琢(みが)かれないから必ず沈むので,就職活動は大概にすべきだ」(114ページ)。首都大学東京前就職委員長と愛媛大学法文学部前前前前前前(くらいかな)就職委員は同じ思いだ。首都大学東京前就職委員長の「感染体験」論も同感。「最終目的&優先順位を巡る試行錯誤は,「スゴイ奴」と出会って感染(ミメーシス)しては卒業する経験が,最も効果的」(121ページ)なのだ。
小さいけれどいい仕事をしている会社や善いことをして儲かっている会社のすすめはこれからのコモン・センスだろう。「スゴイ奴」と出会って「ひとかどの人物」になれと言っているわけだから,「就活」本と思って本書を手にしたらすでに遅い。どのような出会いと学びの中味を作るかが究極の就活なのだ。
一生懸命ワークシートをこなし,自分発見をして内定を得る――「絶対内定」――の馬鹿らしさを知るだけでも一読の価値がある。
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