468山内太地著『こんな大学で学びたい!――日本全国773校探訪記――』

書誌情報:新潮社,298頁,本体価格1,400円,2010年3月20日発行

こんな大学で学びたい!―日本全国773校探訪記

こんな大学で学びたい!―日本全国773校探訪記

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日本の全大学踏破を達成した著者による探訪記である。学生がいつでもいられる空間(ラウンジ,自習室,部室など)の確保,研究だけでなくどんな教育をしているかという指摘,図書館の充実など真っ当な視点がある。第2章「さすが!伝統校の底力」,第3章「教育熱心!環境良好!」,第5章「不況に負けない!「就職力」が磨ける大学」と第6章「大学マニアは見た!びっくりキャンパス大集合」は取材力が発揮されている。
47都道府県を網羅した第4章「がんばれ地方大学!47都道府県イッキ語り 少子化時代の地方大学はどう生き残るべきか」の愛媛県には「愛媛大学は意欲的。松山大学も良いぞ」の見出しで,「愛媛大学の本部キャンパスと松山大学が隣り合っており見学に便利。道後温泉からも近く路面電車ですぐ行ける。松山の大学はもっと観光地として売り出してもよいのでは。愛媛大学は博士課程まで一貫の特別コースがあったり,学生の積極的な活動を教育面で活用したりと大学改革の先進地のイメージ。松山大学は文系四学部で伝統もあり地方では珍しく評価の高い総合大学だが薬学部に手を出してこれがうまくいっていない。どうしたものか。(以下略)」とある。医学部キャンパスには来ていらっしゃらないようだ。
「大学見学の真髄は,それぞれの大学に実際に行き,先入観にとらわれない視点で見つめること」(206ページ)。実際に見て得た見聞記と俗化した大学評判記のごった煮,そして網羅性が本書の特徴といえるだろう。
「私は全国の大学をくまなく見ることで,全ての大学,そして全ての人々には等しく価値があるのだと知った」(298ページ)。そんな書きぶりになっているかどうかは疑問符がつくが,著者の大学見学の旅はいまや世界に広がっている。