591森岡孝二編『就活とブラック企業――現代の若者の働きかた事情――』

書誌情報:岩波ブックレット(No.805),63頁,本体価格500円,2011年3月8日発行

就活とブラック企業――現代の若者の働きかた事情 (岩波ブックレット)

就活とブラック企業――現代の若者の働きかた事情 (岩波ブックレット)

  • 発売日: 2011/03/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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ブラック企業」とは「労働条件が酷いので就職したくない企業」あるいは「労働条件について悪いうわさがあるので,できれば避けたいが,就職難なので避けてばかりもおれない企業」である。広くは,「過労死・過労自殺を起こした企業,労働基準法が守られていない企業,残業時間が異常に長く,サービス残業(賃金未払い残業)が恒常化している企業」となる。
編者は指標として

  • 社員企業に比して採用人数が異常に多く,離職率が目立って高い企業
  • 露骨な性差別があり,女性社員の平均勤続年数がかなり短い企業
  • 基本給+残業代を「初任給」とし,長時間残業を給与体系に組み込んでいる企業
  • 過労死,サービス残業,セクハラ,パワハラなどが問題になった企業
  • 「△年後には独立可能」「入社即店長」「△年後には年収△百万円」などの「夢」をやたらと売り物にする企業
  • 求人情報の労働条件と採用後の労働条件が大きく異なる企業
  • 社長がワンマンないしカリスマで,やたらと従業員のやる気を鼓舞する企業
  • 労働条件があまりに劣悪で,ネット上でしばしばたたかれている企業

を挙げている。過労死弁護団全国連絡会議の弁護士松丸によれば,「労務コンプライアンスの欠けている企業,労働基準法などが遵守されていない企業」が「ブラック企業」である。
就活に際してブラック企業を避け,もし就職してしまったら泣き寝入りせず「ちょっぴり勇気を出してみる」(ユニオンに加入して「正しくキレる」)実践的手引き書が本書である。昨年11月開催されたシンポジウム「若年労働者の過労死・過労自殺からみるブラック企業の見分け方」(エルおおさか,2010年11月17日)を再現したもので,「ブラック企業」の実態(一部実名)と就活体験・労働実態を報告している。
過酷な労働条件によって「自己都合」で職場を去れば受給制限で雇用保険が3カ月間出ないこと,離職票がもらえない(雇用保険に不当に加入されていないかあるいは加入していたのに離職の手続を企業が踏んでいない)とその先もずっと雇用保険を得られないことは知っていていい。
就活生はネット上の情報もさることながらまずは本ブックレットを読もう。ワンコインでまともな働き方を考える術を得ることができるはずだ。