568官製ワーキングプア研究会編『なくそう! 官製ワーキングプア』

書誌情報:日本評論社,xiv+211頁,本体価格1,600円,2010年5月15日発行

なくそう! 官製ワーキングプア

なくそう! 官製ワーキングプア

  • 発売日: 2010/05/06
  • メディア: 単行本

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「なくそう! 官製ワーキングプラ〜反貧困集会」(2009年4月26日,総評会館)以来,公務職場に官製ワーキングプアが数多く存在している実態が明らかになった。ここでいう官製とは公共団体の直雇用の非正規労働者だけでなく,公共サービスに関係する民間などの非正規労働を含んでいる。ワーキングプア問題が可視化され社会問題化するにつれ国・自治体もワーキングプア対策として雇用対策や社会保障・年金財政などの充実に一定取り組まざるをえなくなった。そうした対策を進めるうえで要になる自治体などに雇用されている臨時・非常勤職員や間接雇用している民間委託企業の労働者自体がワーキングプアである。
もともと学校現業の警備,給食,学童擁護(交通安全指導員など)などは臨時・非常勤職員から正規・常勤職員化を勝ち取ってきた業務だった。30年ほど前の中曽根行革(土光臨調)以来の規制緩和構造改革路線によって学校現業の常勤職員を削減し,外部委託が強力に推し進められる。今では保育園,学童クラブ,高齢者や障害者福祉施設,病院,さらには社会教育施設(図書館・博物館・体育館など),地域集会施設などにも拡大されてきた。
直雇用の臨時・非常勤職員から業務委託や指定管理者制度市場化テストなどによる間接雇用に置き換えられている。よく言われる人件費から物件費扱いである。
2004年3月に法人化された国立大学も例外ではない。本書で触れている京都大学や国立情報研は氷山の一角である。ワーキングプア非正規労働者を問題にする大学人はまず自分の足もとのワーキングプア非正規労働者をどうするのかについての態度を表明すべきだろう。
本書は官製ワーキングプアの悲惨な実態の告発だけではなく,訴訟や労組の活用によるワーキングプア脱却の取組についても触れている。今はむかし公共性と社会性を前面に公務労働論が盛んに議論されたことがある。あらためて公務労働の意味が問われている。