310科研費研究成果報告書

マルクス抜粋ノートの編集とその活用による『資本論』形成史研究の新段階の開拓」(基礎研究 (B) 19330042,研究代表者:平子友長,2007年度〜2009年度)の報告書ができあがった。427ページと大冊であり,研究成果報告書としては出色のものとなった。
MEGA第IV部門第18巻は,1864年から1868年にかけてマルクスによって書きとめられた「抜粋およびメモ」を収録する。『資本論』第1巻を執筆しながら農芸化学,土壌学,地質学などの文献のほか日本にかんする抜粋も含まれている。評者は,マルクスの日本論が依拠したとされるオールコック『大君の都』が「日本に関する文献メモ」にはないこと,リービヒとの関わりで紹介されてきたマロンからの詳細な抜粋ノートに注目している。
MEGA第IV部門第18巻としての刊行までにはいますこし時間がかかる。

部・章 執筆者 タイトル
研究の概要 研究代表者:平子友長 -
第 I 部 マルクスの抜粋ノートの意義とMEGA第IV部門でのその編集 -
第1章 リハルト・シュペール MEGA第IV部門での抜粋ノートの編集に寄せて(ドイツ語)
第2章 ユルゲン・ローヤーン 新たな理論の出現――1844年から始まる諸ノートに見るマルクスのノートの重要性――
第3章 佐々木隆 MEGA第IV部門第18巻の編集作業について
第 II 部 マルクスと同時代の経済学者たち -
第4章 出雲雅志 ブラ,リカードウ,マルクス(英語)
第5章 内田 博 デューリングとマルクス
第6章 高畑明尚 マルクス資本論草稿におけるマクラウドからの抜粋文の検討――マクラウド新古典派経済学との関連を中心に――
第 III 部 資本論』草稿と抜粋ノート -
第7章 大谷禎之介 マルクスが使った monied capital という語の上流に遡る
第8章 伊藤 武 資本論』第2部第2稿と第8稿の再生産論
第9章 竹永 進 1860年代中葉におけるマルクスの地代論研究――同時期の抜粋ノート,61-63年草稿,『資本論』第3部第6篇の対比による解明――
第10章 鳥居伸好 資本論』体系における価値理論の展開と「労賃」「生産価格」「地代」――1860年マルクスの理論形成連鎖と構想転換連鎖を中心として――
第11章 森下宏美 マルクス1861-63年草稿ノート第XX-XXIII冊「追補」の分析――「厚いノート Dickes Heft」および「サブノート Beihefte」との関連において――
第 IV 部 マルクスの抜粋ノートに見るマルクスの共同体研究 -
第12章 浅川雅己 マウラーの<マルク共同体>研究とマルクス
第13章 平子友長 マルクスのマウラー研究の射程――後期マルクスの始まり――
第 V 部 農学および自然諸科学にかんするマルクスの抜粋ノート -
第14章 アンネリーゼ・グリーゼ マルクスの地質学・鉱物学・農芸化学にかんする抜粋と彼の化学諸草稿との対比――それらの抜粋を科学史のなかに位置づける――(ドイツ語)
第15章 ロルフ・ヘッカー マルクスによるフルーベク『農学大観』(1853年)からの抜粋について(ドイツ語)
第 VI 部 マルクスと日本 -
第16章 赤間道夫 知的結合のトライアングル――中国・朝鮮・日本における古典派経済学とマルクス経済学――(英語)
第17章 天野光則 マルクスの「日本研究」について――ヘルマン・マロンからの「抜粋」の紹介――
第18章 ロルフ・ヘッカー ヘルマン・マロンの伝記的事実――プロイセンの日本調査団中の農業専門家――(ドイツ語)
付録 MEGA第IV部門第18巻目次 -