090神武庸四郎著『経済史入門――システム論からのアプローチ――』

書誌情報:有斐閣コンパクト,xi+258頁,本体価格1,900円,2006年12月10日

経済史入門―システム論からのアプローチ (有斐閣コンパクト)

経済史入門―システム論からのアプローチ (有斐閣コンパクト)

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経済をシステムとしてとらえ,ひろく経済学へ誘う経済史学の入門テキストである。類書とことなるのは,ルーマンの「社会システム」概念を援用した数学的説明を配していることと経済理論,方法論,経済学史など経済学への昇華を企図していること。ほぼ半期分にあたる大学の講義を想定(著者の経験でもある)し,経済史学,経済と社会,経済システム(理解とゆくえ),市場,資本主義,産業革命,経済学史,社会主義,経済政策のトピックで構成されている。
よく見られる経済史の編年的叙述を排し,経済システムそのものの理解を重視した叙述は,経済史の入門書としては異端ともみなされるかもしれない。経済史上のエピソードや具体的な史実については意識的にそぎ落とされているからである。順序集合,変分法,交換のイデア,オートポイエシス,「無知の知および無知」など社会システム論やパラダイム論に関連した説明は,経済学と数学や科学方法論との強い結びつきと本書に込めた著者の思いを示唆している。