書誌情報:創元社,271頁,本体価格2,500円,2010年4月10日発行
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語り下ろしの第一作目だった。『イギリス近代史講義』(下記関連エントリー参照)と一部内容が重なるが,こちらは著者の研究生活回顧録だ。
柴田三千雄・松浦高嶺編『近代イギリス史の再検討』御茶の水書房,1972年,[asin:B000J9GHRW]),『工業化の歴史的前提――帝国とジェントルマン――』(岩波書店,1983年,[asin:B000J79S8Y]),『講座西洋経済史』(全5巻,同文舘,1979年〜1980年,[asin:B000J8DUFK]・[asin:B000J8DUFA]・[asin:B000J886WM]・[asin:B000J886WC]・[asin:B000J8DALY]),ウォーラーステインの翻訳などはよく知られた著者の作品である。「帝国とジェントルマン」の命題に連なる『路地裏の大英帝国――イギリス都市生活史――』(共編,岩波書店,1983年,[isbn:9784582474022],平凡社ライブラリー:[isbn:9784582763812]),『洒落者たちのイギリス史――騎士の国から紳士の国へ――』(平凡社,1986年,[isbn:9784582474138],平凡社ライブラリー:[isbn:9784582760088]),『「非労働時間」の生活史――英国風ライフスタイルの成立――』(編著,リブロポート,1987年,[isbn:9784845702695]),『砂糖の世界史』(岩波書店,1996年,[isbn:9784005002764])も著者の名を高からしめた。評者も愛読した。
大塚史学にたいする「再検討派」,ジェントルマン資本主義論者の自伝として,「ベースに経済レベルの問題がある」(171ページ)とした経済史の視点の獲得過程がよくわかる。簡潔な人名・書名・事項などの注,『イギリス近代史講義』を補完できるコラム,著書・翻訳書・論文の主要著作一覧は丹念な作り込みだ(おそらく聞き手玉木の作成)。
「いまや,全国,いや世界中にあふれている,定職をもてなくてもがいている日本人の若手研究者たち」(「はじめに」8ページ)にささげられているのだが,大学院重点化に「どんな影響が出るかということはあんまり考えないで進めていった」・「いまどきポス・ドク問題などというのは,手遅れ」(221ページ),法人化に「新自由主義の暴虐みたいなもの」(226ページ)と省みるだけでは強いメッセージとはいえない。「「今」の問題にかんしても,多少は自分の立場で発言できるような歴史学でないとまずい」(234ページ)のだ。
- 関連エントリー
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- 神武庸四郎著『経済史入門――システム論からのアプローチ――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070830/1188464972
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- 柴田徳太郎著『資本主義の暴走をいかに抑えるか』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100102/1262442802
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