1085新元号とマルクス主義(その2)

日本はかつて先進国だった唐に遣唐使を十数回派遣し制度や文化を学び吸収しようとした。日清戦争直後から清は留学生を日本に送る側になった。13名の留学生が派遣されたと記録されている。それ以降中国人留学生は増え,1899年には200名を突破し,1902年には4〜500名になり,ピークをむかえた1906年には8,000名を数えた。これには異論もあって20,000名を超えていたとの説もある。8,000名という数字は実藤恵秀著『中国人日本留学史(増補版)』(くろしお出版,1970年,ASIN:B000J6MRGK)に拠っている。

その後辛亥革命(1911年)を機に留学生の多くが帰中したが,中華民国(1912年)になってからもいわゆる国費留学生は絶えることなく続き,1931年の時点で3,096名いたとされる(当時発行されていた日華学界学報部発行の留学生名簿による)。日中戦争勃発前の1936年(6月)時点では5,945名に達していた(同上)。これらの調査は,実藤の『中国人日本留学史稿』(財団法人日華学会,1939年)や『中国人日本留学史』(くろしお出版,1960年)に詳しく,本エントリーに直接関わる留学生による翻訳による中国語への受容にも触れている。

さらに,中国におけるマルクス主義受容に中国人留学生の果たした役割についてもすでにいくつかの研究書がある。石川禎浩著『中国共産党成立史』(岩波書店,2001年,ISBN:9784007302831),三田剛史著『甦る河上肇——近代中国の知の源泉——』(藤原書店,2003年,ISBN:9784894343214),折戸洪太著『中国における社会主義経済理論の展開』(不二出版,2004年,ISBN:9784835041407)がその例だ。石川著は中国マルクス主義の展開に日本マルクス主義流入があったことを,三田著は河上肇の著作が中国に伝えられたこととその影響を与えたことを,折戸著は中国のマルクス主義文献の翻訳初期の状況を,それぞれ明らかにしていた。(以下続く)

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