1084新元号とマルクス主義(その1)

元号が決まったということでマスコミの報道はいささか度を越している。ここぞとばかりの商戦はいざ知らず,たまさかの天皇の代替わりを21世紀の「近代民主主義国家」たる日本が声高に叫ぶのはどうかと思う。

奈良時代の「万葉集」を典拠としたことで日本の歴史上初の国書からの元号とのことだが,安倍首相やその周辺では日本の独自性を出すべく国書からの思いが強かったと言われている。「5世紀,日本に漢字がもたらされた。漢文の奥深さは日本語を豊かにした。19世紀になると,日本人は漢字を使って西洋の思想を翻訳した。新しい単語は中国に逆輸入され,今でも中国語として使われている」(昨年訪中時のフォーラムでの安倍首相の発言。朝日新聞2019年4月2日付記事から孫引き)。あるいは笹川陽平日本財団会長)の次の主張も同じ趣旨だ。「日本には優れた造語の歴史があり,特に明治以降は約1千語もの和製漢語が中国に導入され,現在も広く使用されている」(笹川「中国古典にとらわれず新元号を」,同じく朝日新聞2019年4月2日付記事から孫引き)。

安倍の「新しい単語は中国に逆輸入され,今でも中国語として使われている」や笹川の「特に明治以降は約1千語もの和製漢語が中国に導入され,現在も広く使用されている」はその通りだ。ただし,「漢字を使って西洋の思想を翻訳」したのはマルクス主義を含む社会科学用語が多く含まれているのだ。日本を経由して中国への「逆輸入」「導入」となったのは,西洋思想を紹介することによって長らく近代民主主義とは無縁だった日本や中国の国のあり方への問題提起だった。(以下続く)

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