1586岡部祐介著『スポーツ根性論の誕生と変容——卓越への意志・勝利の追求——』

書誌情報:旬報社,176頁,本体価格1,800円,2021年11月25日発行

スポーツ根性論は1964年の東京オリンピックを契機としており,その象徴として「東洋の魔女」の大松イズムと「円谷幸吉物語」を分析している。梶原一騎巨人の星」,浦賀千賀子「アタックNo.1」,美空ひばり「柔」,水前寺清子「ゆさぶりどっこの唄」,「いっぽんどっこの唄」,「どうどうどっこの唄」,村田英雄「柔道水滸伝」,山田太郎「新聞少年」などにその影響を見ている。スポーツ界の根性論が一般社会や教育,大衆娯楽に受容されその流行が促進されたという。
松本大洋『ピンポン』(ビックコミックス版:(1)[asin:B009JZH7K8](2)[asin:B009JZH7NA](3)[asin:B009JZH7PS](4)[asin:B009JZH7N0](5)[asin:B009JZH7NK]小学館文庫版(1)[isbn:9784091962416](2)[isbn:9784091962423](3)[isbn:9784091962430])が要所で関説されている。
遊びの延長で卓球の面白さや楽しさを原体験とし,技術の向上・達成感や勝敗による悲喜といったものから,「勝利/敗北の二元的なコード(規範)」・「勝利至上主義を核心とした近代スポーツの論理・構造」(18-19ページ)に組み込まれてしまうという。『ピンポン』のクライマックスから「スポーツにおける単純で原初的な幸福・歓びの追求」・「実践主体にとって実存的なレベルで生き生きした実践」(170ページ)を切り取っていた。