148大石先生追悼文集刊行会編『日本近代史研究の軌跡――大石嘉一郎の人と学問――』

書誌情報:日本経済評論社,xii+358頁,本体価格6,000円,2007年11月21日

日本近代史研究の軌跡―大石嘉一郎の人と学問

日本近代史研究の軌跡―大石嘉一郎の人と学問

  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 単行本

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大石嘉一郎の論文はかつて大学院受験対策で入れ込んで読んだことがある。巻末の「著作目録」を参照すると1970年代から80年代に書かれた,日本資本主義史論にかかわるものを集中的に読んでいる。

大石の自由民権運動史,近代日本地方自治史,財政史,都市史など幅広い研究のうちごく限られたものでしかないことにあらためて気づいた。「研究史サーベイの広さと,その研究の位置づけの見事さ」(35ページ,武田晴人)は,評者が読んだ日本資本主義史論にとくにあらわれている。「講座派と大内(力:引用者注)理論の折衷」(92ページ,柴垣和夫),「柔らかい講座派」(116ページ,橘川武郎),「動態的把握にもとづく構造史分析」(179ページ,大門正克),「継続説寄り」(197ページ,保志恂)などとする大石理論への評価も,それぞれの日本資本主義史にたいするアプローチの違いが出ていよう。大石はこよなく「バッカスの神」を愛し,送られてきた抜刷や著書への返礼は欠かさなかったという。
大石嘉一郎という一人の研究者を通じてみた日本近代史の研究史として,吸収したい多くの内容が詰まっている。
かつてこのエントリーで書いた「またまた一橋大学附属図書館広報誌『BELL』と幻の酒「冨國論」」(https://akamac.hatenablog.com/entry/20070706/1183713629)に関連して,「(大石:引用者注)先生のご著書の前には,先生が珍しく褒めて下さった会津の実家の吟醸酒『亜當斯密 冨國論』が供えてあります」(164ページ,田崎[「大」は正しくは「立」]公司)とあった。こんな出会いがあるからおもしろい。