書誌情報:同時代社,249頁,本体価格2,000円,2014年1月31日発行
- 作者:川上 徹
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本
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著者が全学連(民青系)委員長をしたことやその後共産党から「新日和見主義」として批判されたことは知っていた。ほかならぬ著者の若かりしときの作品である『トロツキスト――その「理論」と実態――』(日本青年出版社,1967年,[ASIN:B000JA49NK])や『トロツキズム』(山科三郎との共著,新日本新書,1968年,[ASIN:B000JA5D4O])を若かりし時代の評者が読んでたことがあるからである。共産党から批判され「除名・追放」された(「90年に日本共産党を離党」と「著者略歴」にある)後の著作である『査問』(筑摩書房,1997年12月,[isbn:9784480818089])や『素描・1960年代』(大窪一志と共著,同時代社,2007年3月,[isbn:9784886836038])は読んでいない。
懐かしい著者の名前を目にし,新旧左翼の元・現活動家からの聞き取りということで一読してみた。本書では実名を挙げている聞き取りの相手は,フロント,解放派,第四インター,ブント赤軍派,中核派,社会主義協会,共産党などで活動したことのある1940年から50年生まれの10人である(革マルは含まれていない)。こういう対話が可能になったのはおそらく著者が元共産党員だったという経歴も関係するだろう。
すでにそれぞれの組織から「離党」したもの,現役で活動している「党員」もいる。聞き取りのポイントは左翼運動にかかわることになった「はじまり」である。絶滅危惧種とも揶揄されつつある「サヨク」の誕生物語である。
左翼への関わりとあえてその道を決断した理由はなにか。時代の息吹といえば聞こえはいいが,彼らを突き動かした何かがあったのだ。1989年で左翼は終わったとするもの,発見した市民社会に希望を託すもの,自分のところから足場を固めようとするもの。現実と未来の捉え方は違っても「衰亡」とは言い切れない物語があった。
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