410吉岡直人著『さらば,公立大学法人横浜市立大学――「改革」という名の大学破壊――』,高橋寛人著『20世紀日本の公立大学――地域はなぜ大学を必要とするか――』

(1)書誌情報:下田出版,vi+294頁,本体価格2,000円,2009年3月25日発行,isbn:9784902811827
(2)書誌情報:日本図書センター,vi+352頁,本体価格3,800円,2009年8月30日発行

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(1)は横浜市立大学の行政権力の介入による「改革」に抗議して定年を待たず辞職した著者による告発書である。国立大学が独立行政法人化し,国立大学法人となったのは2004年だった。2005年には横浜市立大学地方独立行政法人法で規定された公立大学法人となった。東京都立大学首都大学東京となったことも記憶に新しい。両大学とも行政(およびその長)によって改革が進められたという点では共通している。
改革の具体的な進行,サイレントマジョリティを決めこむ教員の心性を資料とともに描き,ひとり公立大学だけの問題ではないことを語っている。
(2)は旧制公立専門学校の設立経緯,公立大学の国立移管の事情を,すべての公立大学を対象にした公立大学通史である。戦後の学制改革で一気に30校以上の公立大学が誕生した。戦前から大学であったのは,京都府立医科大学と大阪商科大学(現大阪市立大学)だけであり,戦前の旧制専門学校が大学になった。日本初の公立旧制専門学校は,愛知県立医学専門学校,大阪医学専門学校,京都府立医学専門学校という(1903年)。
すべての公立大学について設立事情を悉皆的に叙述した類書を知らないのだが,1990年代に入ってからの公設民営大学も視野に入れており,はじめての本格的な公立大学・公立旧制専門学校史であろう。1903年から2000年までの新設・学部増設・国立移管の参考資料もついている。
(2)の著者も横浜市立大学関係者である(教授)。告発書(=ある意味大学史)と研究書の違いがあれ,両書とも学問の自由と大学の自治についての揺るぎない確信では共通していた。