『中央公論』2010年1月号が「大学の絶望」の特集を組んでいる。
- 特集「大学の敗北」
「絶望」といい,「敗北」といい『中央公論』はこの種のペシミズムが好みのようだ。小林,西田,黒木の各稿は,「経済用語より,教育の言葉」を希求し,100人中16人無職,8人が死亡・行方不明と換算できる博士課程の惨状について述べながらポジティブな処方箋を模索し,地方国立大学の知の拠点の可能性を強調しており,「敗北」を超える前向きの姿勢を読み取ることができる。
「ネガティブな要素を再生産するだけでは,何も生まれはしない。むしろ私は「この世界」にあえて留まるためにも,それらを引き受けた上で,「希望」を見いだし,コミュニティ単位で実現可能な処方箋を模索したい」(西田)という意見に与したい。また,地方大学を軽視・蔑視する経済財政諮問会議民間議員(東京大学教授)への批判(黒木)は真っ当だと思う。
「絶望」,「敗北」とくればつぎは「死」しかないな。
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