289「大学の敗北」論――『中央公論』2010年1月号の特集

中央公論』2010年1月号が「大学の絶望」の特集を組んでいる。

  • 特集「大学の敗北」
    • 養老孟司「横並び主義が学問を殺した 東大よ,「世間」に背を向けよ」
    • 林哲夫「学生を路頭に迷わせた「失敗」の履歴」
    • 西田亮介「見えない将来の生活像…… ある若手研究者の悩み多き日常」
    • 黒木登志夫「東大一人勝ちの弊害と,科学音痴政治家の罪 地方大学は生き残れるか」
    • 吉見俊哉「爆発の時代に大学の再定義は可能か」

「絶望」といい,「敗北」といい『中央公論』はこの種のペシミズムが好みのようだ。小林,西田,黒木の各稿は,「経済用語より,教育の言葉」を希求し,100人中16人無職,8人が死亡・行方不明と換算できる博士課程の惨状について述べながらポジティブな処方箋を模索し,地方国立大学の知の拠点の可能性を強調しており,「敗北」を超える前向きの姿勢を読み取ることができる。
「ネガティブな要素を再生産するだけでは,何も生まれはしない。むしろ私は「この世界」にあえて留まるためにも,それらを引き受けた上で,「希望」を見いだし,コミュニティ単位で実現可能な処方箋を模索したい」(西田)という意見に与したい。また,地方大学を軽視・蔑視する経済財政諮問会議間議員(東京大学教授)への批判(黒木)は真っ当だと思う。
「絶望」,「敗北」とくればつぎは「死」しかないな。